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なぜ、呼吸のアプリからアラームを外したのか
私は奄美大島に住んでいます。日本の本土から南へ約 380 km の島で、小さな会社をやっています。この 9 月から、自分たちのアプリを App Store に出し始めました。2 本目が BREATHING です。画面にろうそくが一本あって、その炎に合わせて呼吸する。決めた時間が来ると、炎が消えます。アラームは鳴りません。
これは、その最後の一文についての話です。
アラームは、起こすための音
呼吸や瞑想のアプリは、たいてい終わりに音が鳴ります。チャイム、鈴、ベル。装いは違っても、アラームです。それ自体はもっともな設計です。時間を決めたなら、時間が来たことを何かが知らせなければならない。
ただ、音は、気づかれるためにあります。鳴った瞬間、注意はそちらへ引かれる。リラックスできたときほど、引き戻しが強い。ふだん身構えるための枠が緩んでいるぶん、衝撃を受け止める緩衝材がないからです。そしてもうひとつ、より静かな影響を受けてしまいます。鳴ると分かっている。だからセッションの後半、自分のどこかがずっとそれを待っている。終わりを告げる音が、終わりの前の数分を薄くしてしまう。
お寺の鐘は違います。あの音は長く減衰して、いつ止まったのか分からない。スマートフォンのアラームは、その最初の一瞬だけを残して、あとを捨てています。目覚まし時計の考える音です。起こすための音。私たちは、静めるための時間の終わりに、起こすために設計された音を置いてきたともいえます。
終わりを、耳ではなく皮膚に届ける
BREATHING は、終わりを知らせません。画面のろうそくは、決めた時間に合わせて短くなっていきます。時間が来ると、炎は消えます。静かに、呼気の終わりで。煙が立ち上り、残光がゆっくり落ちる。それだけです。
目を閉じていても、まぶた越しに明るさが変わったことは分かります。終わりは耳からではなく、皮膚から届く。驚かないし、身構える必要もなかった。ある時点で、もう終わっていたことに気づくだけです。
「アラームなし」が、実際には何を意味したか
言葉にすれば一行です。アラームなし。作ってみると、それは一連の決断になりました。
ちょうどの秒では止めない。 5 分と決めても、ろうそくは 5:00 では消えません。時間を過ぎた直後の、呼気の終わりまで待ちます。吸っている途中で消える炎は、途切れた感じがする。吐き切ったところで消える炎は、そうならない。5 分が結局 306 秒になる。それでいいと思っています。
炎が消える音も、外した。 最初の版では、炎が消えるとき小さく「ジュッ」と鳴っていました。本物のろうそくの音です。正直だと思ったし、区切りとして十分やさしいとも思った。それから、試作機を前にしばらく座って、一緒に呼吸して、その音を聞きました。ほんの小さな音です。でも鳴った瞬間、それまで落ち着いていた静けさが、逆に動き出した。線が引かれたのです。ここまでが静かで、ここで終わり、という線が。その線こそ、引かないようにしていたものでした。「ジュッ」を外しました。いまの BREATHING は、最初から最後まで無音です。区切りは、煙と残光だけ。
真っ暗にしない。 炎が消えたあと、画面は 45 秒ほどかけて暗くなりますが、黒にはなりません。黒い画面は、それ自体が「終了」の表示です。少しの明るさが残り、目を開けるのは自分のタイミングでいい。
褒めない。 「5 分完了」も、連続記録もありません。炎が消えたことで、終わりはもう伝わっている。それを数字でもう一度言う必要はない。
何を手放したか
はっきり言っておくと、BREATHING は誰にでも向くアプリではありません。時間が来たことをきちんと知らせてほしいなら、アラームのあるアプリのほうが役に立ちます。
使われ方を知ることも手放しました。通信をしないので、数字はこちらに返ってきません。代わりにあるのは、島の周りの人が試して、直接教えてくれる一言です。
同じ決まりを、ひとつ先の版で
先週、1.1 を公開しました。ここまでの話と逆に聞こえるかもしれない機能が入っています。呼吸スキャンです。親指を画面に置いて、吸うときは上へ、吐くときは下へ動かす。炎が親指についてくる。指を離すと、アプリは見たものを伝えます。1 分間の呼吸数と、吸う・止める・吐く・止める、それぞれの秒数。
測りますが、評価はしません。理想の数字も、目標も、「昨日より良い」もない。記述して、それきり黙る。測った形はろうそくに送って自分のリズムにできて、スキャンの役目はそこで終わりです。アラームと同じ決まりを、数字に当てはめただけです。アプリは何かを見せてもいい。でも、それをどう感じるべきかを言ってはいけない。
終わりについて
ろうそくは、最初から最後まで、ひとつのことしかしません。短くなる。急かさないし、褒めもしない。時間が来て、吐き切ったところで、消える。
MEMOROLL はずっと使ってもらいたいアプリとして作りましたが、BREATHING は、いつか使う人が手放すアプリになってほしいと思っています。
終わりは、知らされなくていい。気づくものでいい。それが、私が作りたかった終わり方です。
BREATHING は App Store で無料、日本語と英語。奄美大島の一人の開発者が作りました。— https://resdev.jp/app/breathing/